10月から年金が変わる、賃金要件撤廃と育児期間の免除

厚生労働省が公表した令和8年10月の制度変更のうち年金関係4項目を整理。短時間労働者の賃金要件の撤廃、保険料調整、育児期間の国民年金保険料免除の内容と確認先を解説します。
一次情報公的機関・公式資料などの一次情報と照合して作成しています。このサイトについて
ニュースの概要
厚生労働省は「厚生労働省関係の主な制度変更(令和8年10月)について」で、2026年10月に実施される制度変更を公表しています。そのうち年金関係では、短時間で働く人の厚生年金・健康保険(被用者保険)の加入条件と、自営業者・フリーランスの保険料に関わる変更が4項目並んでいます。
本記事ではこの4項目を、保険や社会保険料を見直したい会社員・パート・自営業の人向けに整理します。個別の加入可否や保険料の額は、勤務先や年金事務所、お住まいの市区町村の窓口で確認してください。
何が変わるのか
厚生労働省の一覧に載っている年金関係の変更は次のとおりです。
- 短時間労働者の被用者保険における賃金要件の撤廃:これまで加入条件の一つだった月額8.8万円(年額換算で約106万円)の賃金要件をなくします。厚労省の説明では、最低賃金が1,016円以上の地域では週20時間働けばこの要件を満たすことから、全国の最低賃金が1,016円以上になっていることを踏まえた措置とされています。
- 最低賃金の減額特例の対象者への措置:賃金要件の撤廃後も、最低賃金法の減額特例許可の対象となる短時間労働者で賃金が月額8.8万円未満の場合は、被保険者としない扱いになります。そのうえで、本人が希望すれば、事業主の同意なしに任意で加入できる仕組みが設けられます。
- 企業規模要件の撤廃等に伴う経過措置(保険料調整)の導入:令和7年の年金制度改正で被用者保険の適用が広がり、新たに適用事業所となった比較的小規模な事業所で働く短時間労働者について、加入による手取りの減少を和らげるため、保険料負担を軽くできる制度が設けられます。
- 育児期間の国民年金保険料免除制度の導入:1歳未満の子を養育する国民年金第1号被保険者(自営業者、農業者、フリーランス、学生、無職の人など)の保険料の納付が免除されます。免除された期間は、保険料を納付したものとして将来の年金額に反映されます。
育児期間免除の詳細は、厚生労働省と日本年金機構のページで、次のように説明されています(対象外の区分は厚生労働省のページの記載です)。
- 対象は、1歳未満の子と同一住所で養育している実父母・養父母で、国民年金第1号被保険者の人。所得要件はありません。
- 厚生年金に加入する第2号被保険者、その扶養配偶者の第3号被保険者は対象外です。
- 免除される期間は、原則として、子を養育することになった月から、子が1歳の誕生日を迎える月の前月まで(最大12か月)です。実母の場合は、産前産後免除の期間に続く9か月間とされています。
- 届出の方法は、日本年金機構のページで案内されています。
読者への影響
会社で働く短時間労働者にとっては、賃金要件の撤廃で、月の賃金が8.8万円に届かなくても、ほかの条件を満たせば被用者保険の対象になりうる点が大きな変更です。条件のうち何が残るか(週の所定労働時間、勤務先の規模、学生かどうかなど)は人によって異なるため、「自分は対象か」を一律に言い切ることはできません。勤務先の担当者に確認するのが確実です。厚労省の一覧には「企業規模要件撤廃等」の経過措置も載っており、勤務先の規模に関する条件も段階的に見直されている点には注意が必要です。
手取りの面では、加入すると健康保険料と厚生年金保険料が給与から引かれる一方、将来の年金の上乗せや、傷病手当金・出産手当金といった給付の対象になる点が変わります。保険料調整制度は、このうち手取りの減少を和らげるための経過措置と位置づけられています。
自営業・フリーランスの人は、育児期間免除が最も関係します。出産直後は収入が不安定になりやすく、保険料の負担が重くなる場面が多いため、1歳になるまでの間に保険料を払わなくても年金額に反映される点は実利があります。第1号被保険者の保険料を納めている家庭の暮らしの判断材料になりそうです。
確認しておきたいこと
- パート・アルバイトの人は、勤務先に「10月から自分の加入条件がどう変わるか」を確認する。
- 減額特例の対象で月額8.8万円未満の場合は、加入するかどうかの意思表示が必要になる可能性があるため、窓口で確認する。
- 1歳未満の子を養育する第1号被保険者は、日本年金機構または市区町村窓口で育児期間免除の届出方法を確認する。
- 退職や転職を考えている人は、当サイトの退職後の健康保険の選び方や国民健康保険の保険料の仕組みも合わせて確認しておくと、保険料の比較がしやすくなります。
筆者の見解
私見では、今回の変更の核心は「年収の壁」の見え方が変わる点にあると考えます。賃金要件がなくなると、「年収106万円を超えると社会保険料が発生する」という従来の目安は使えなくなり、基準は主に働く時間や勤務先の条件に移ります。働き控えの判断が「金額」から「時間」に変わるため、家計の見直しの軸も組み替える必要があります。
一方で、保険料調整制度や任意加入の仕組みが並べられているのは、制度の側が「加入で手取りが減る」ことを課題として認識している表れだと読みました。ただし経過措置である以上、期間や条件は限られると思われます。いまの手取りだけで判断せず、将来の年金額や給付とのトレードオフを見てほしいと考えます。
育児期間免除は、第1号被保険者向けの数少ない子育て支援の一つです。第2号被保険者には育児休業中の保険料免除という別の仕組みがありますが、育休を取らない人との扱いの違いは、制度の谷間として見ておきたい論点だと思います。ただし、これは厚労省の資料から読み取れる範囲の私見であり、個別の有利不利は人によって異なります。
出典
2026年10月7日時点の情報です。
本記事は制度・用語に関する一般的な情報の提供を目的としており、特定の保険・金融商品の推奨や勧誘、税務・法律・投資に関する個別の助言ではありません。制度の内容・金額・期限は改正されるため、最新の内容は国税庁・金融庁・厚生労働省・日本年金機構・各保険会社などの公式ページでご確認ください。個別の判断は、税務署・年金事務所・保険会社・税理士などの専門家にご相談ください。「筆者の見解」は一つの考え方です。